日本語上級者のフリートーク以外のレッスンって、どんなことをしたらいい?
新人日本語教師 ゆりかさん普通のフリートークだけでは物足りない気がする。
でも、上級だから文法や教科書を使うて感じでもないし。
こんなこよく他の日本語教師の方々から相談されます。
上級者レッスンが難しく感じられるのは、
「ネタがないから」でも「経験が足りないから」でもありません。
多くの場合、ヒアリングをしっかりと行わないのでレッスン全体の設計や、ゴールの置き方が整理されていないことが原因です。



この記事では、私が実際に行っている日本語上級者レッスンを例に、レッスンをどのように組み立てているのかを整理してご紹介しますね。


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上級者の目的は多種多様
上級者のニーズは多岐に渡っています。
初級者・中級者の段階と上級者のニーズの違い
初級者・中級者の段階では語彙や文法を増やす、会話に慣れるといった「日本語そのものの習得」が主な目的になります。
それに対して、上級者になると、日本語はすでに目的ではありません。
日本語を道具として使って、何を達成したいのか。
そこがレッスンの軸になります。
日常会話はN2程度でなんとかできるので、上級者で日本語レッスンを受ける人は仕事や研究、進学など、明確な目的を持っています。
職種や立場が違えば、必要な語彙、表現、思考の深さもまったく変わります。
つまり、上級者レッスンでは「この教材をやればOK」という共通解は存在しません。
だからこそ大切なのが、生徒の目的に合わせてレッスンを組み立てる引き出しを持っておくことです。
ここからは、私が実際に行っている日本語上級者レッスンの例をもとに、どのようにレッスンを設計しているのかをご紹介していきます。
論理的に話す (面接、入試準備)


生徒からの要望で多いのが、面接の時などで自分の考えをうまく話すことができない、というものです。
これは日本語力の問題というより、日本語上級生徒の場合考えを日本語でどう組み立てて話すかというスキルの問題であることがほとんどです。
レッスンで意識していること
このタイプのレッスンでは、いきなり話させるのではなく、まず「型」を共有します。
例えば、
- 結論 → 理由 → 具体例 → まとめ
- 話の順番を意識する
といった考え方です。(PREP法など)
話し終えた後は、何が伝わったかどこでズレが起きたかをフィードバックします。
生徒が伝えたかった内容と、こちらが受け取った内容が一致していれば、「伝わる話し方」ができているということになります。
レッスンのステップ
①テーマを準備し生徒に共有して自分の意見をまとめておいてもらう
②レッスンでそれを発表してもらう
③発表についてのフィードバック+日本語の間違いなどの訂正
④テーマについての意見交換(その中でも論理的に話すよう心がけて話してもらう)
こんな生徒におすすめ
- 面接を控えている生徒
- 仕事でわかりやすく顧客に説明、説得する必要がある生徒
- 自分の考えを整理して話したい
実例:Dさん MBA入学準備をしたい
- 要望
-
日本のMBAに進学するため、面接と書類対策をしたい
- レッスン内容
-
- 小論文・研究計画書のチェック
- 面接でよく聞かれる質問の整理
- 模擬面接面接でよく聞かれることの準備 模擬面接
期待できる効果
- 論理的な文章構成が理解できる
- 面接で想定外の質問にも対応できる
- 不自然な日本語表現の修正
- 教材
-
生徒が書いた入学志望理由や面接でよく聞かれる質問の回答文
実例:Eさん 日本の大学院進学希望 文学関連の研究をしたい大学生


- 要望
-
日本の大学院で文学の研究をしたい
- レッスン内容
-
- 文学作品の感想、考察を話し合う
- 小説のあらすじ説明
- 生徒の出身国の文学と日本文学の比較
- 面接対策
期待できる効果
- 自分の考えを筋道立てて話せる
- 表現力・説明力の向上
- 思考の言語化
- 教材
-
小説等



生徒が扱う本は、可能な範囲で教師側も読むことをおすすめしています。
内容を理解していることで、より踏み込んだ質問ができます。
Fさん日本語学科の大学生 (日本で留学、その後就職希望)
- 要望
-
社会問題について、日本語で論理的に意見を述べたい
- レッスン内容
-
社会問題に関する記事などを読む
自分の意見を述べる練習
期待できる効果
- 世界の情勢、問題についての知識を得ることができる
- 世界情勢に関わる語彙、表現を学び、アウトプットすることによって使えるようになる
- 会話の場合はもちろん、日本に留学、就職の際に役立つ論理的に意見を述べる力が身につく
- 教材
-
高校生向けの時事問題に関する教材等(小論文対策)
ニュース



これらのレッスンは、「面接対策」や「進学準備」と専門的に見えますが、実際には 上級者フリートークの土台になる力を鍛えています。
自分の考えを整理し、相手に伝わる形で話す。
これは、どんなレベル、どんなテーマのフリートークでも必要になる力です。
次は、こうした論理的な話し方を、
実際の仕事の場面でどう使っていくかを見ていきましょう。


ロールプレイ プレゼン等 (ビジネスの実務に直結するレッスン)


日本語上級者の中には、実際の仕事で日本語を使っている、またはこれから使う予定の生徒も多くいます。
特に多いのが、
- 日本人顧客への説明
- 社内プレゼンテーション
- 商品・サービスの紹介
といった場面です。
このタイプの生徒には、知識を教えるよりも実際に使う場面を再現することを重視します。
レッスンで行っていること
まずは、生徒にプレゼンテーションやセールストークをしてもらいます。
私は聞き手になり、実際の相手と同じ立場で話を聞きます。
その上で、
- 文法や不自然な表現の修正
- 発音やイントネーションの確認
- 「ここが分かりにくかった」という点の指摘
を行います。
特に大切にしているのは、こちらが理解できなかった部分を、そのままにしないことです。
生徒が説明に詰まった場合は、
- 何を言いたかったのかを確認する
- それを日本語でどう言えば伝わるかを一緒に考える
という流れで進めます。
これは、日本語を教えるというより、伝わる日本語に調整する作業です。
商品説明やサービス紹介など、実務に直結する内容にも応用できます。
レッスンのステップ
1発表を聞く
2スライド、表現、発音などの訂正
3 質問を挟みながら内容確認
4 全て終了後内容についての質問
5全体終了後、構成・伝え方についてフィードバック
こんな生徒におすすめ
- 仕事でわかりやすく顧客に説明、説得する必要がある生徒
- 会社でプレゼンテーションをする機会が頻繁にある生徒
- 自分の日本語の発音が相手に伝わっているか自信がない生徒
実例:Bさん(IT企業勤務・日本人顧客対応)


- 要望
-
日本人の顧客や社内の日本人社員と、失礼のない形で円滑にコミュニケーションを取りたい
- レッスン内容
-
- 商品・サービスの説明
- 他社製品との違いの説明
- 業界の現状・今後の展開についてのディスカッション
- 実際に使っているスライドでのプレゼン練習
- 教師が取引先役になってのロールプレイ
- 競合他社の記事読解
- IT関連の記事から語彙・表現の確認
- ビジネスメール(断り・催促など)の添削
期待できる効果
- 自社・自分の業務内容を日本語で説明できる
- 顧客への説明がわかりやすくなる
- 異業種の日本人とも会話が成立する
- ビジネスメールを失礼なく書ける
- 教材
-
- 生徒が実際に使っている資料
- 生徒作成のスライド
- 実際に送った/送る予定のメール
- 競合他社のWebサイト



このようなロールプレイ型のレッスンは、
フリートークとは違い、場面・相手・目的がはっきりしているのが特徴です。
ですが土台にあるのは同じで、相手に伝わるように話す力と
状況に応じて言い方を調整する力を伸ばす能力が必要になります。
この力がないままビジネス日本語だけを教えようとすると、
生徒は表現だけ暗記して実際の場面で使えない、という状態になりがちです。
次は、こうしたロールプレイやプレゼンとは少し違い、「書く力」に焦点を当てた上級者レッスンをご紹介しますね。
メール、文章の添削(日本らしい言い回し等)


書く力・添削は「上級者の弱点」が最も見えやすい。
どれだけ流暢に話せる生徒でも、文章になると途端に不自然になることがよくあります。
特に多いのが、
- ビジネスメール
- 説明文
- 意見文・レポート
です。
話すときはジェスチャー、補助資料、また勢いで伝わってしまう部分も、書くと文法・語彙・助詞のエラーがはっきり見えてきます。
そのため、書くレッスンは日本語力の確認として非常に有効です。
メール・文章添削のレッスン
ビジネスの現場では、
- 断り
- 催促
- 説明
- 調整
といった、言いにくい内容を文章で伝える場面が多くあります。
外国語をそのまま日本語に置き換えると、内容は正しくても、日本人には強すぎたり、冷たく感じられたりします。
レッスンでは、
- 文法の訂正
- よく使われる言い回し
- ニュアンスの違い
を、実際の文章を使って整理していきます。
レッスンの流れの例
- 生徒に文章を書いてもらう(実務で使ったものでもOK)
- 添削+理由の説明
- 他にも使える表現・言い換えの紹介
単なる添削で終わらせず、「なぜその表現が適切なのか」を理解してもらうことが重要です。
こんな生徒におすすめ
- 日本人と頻繁にメールのやり取りがある
- 書くと不自然になる自覚がある
- 就職・転職を控えている
専門知識の説明をするレッスン
研究者や技術職など、専門性の高い分野にいる生徒には説明する力そのものをレッスンにします。
ここでのポイントは、教師がその分野の専門家である必要はない、ということです。
むしろ、「日本語はわかるが、内容は知らない人」として聞くことで、
生徒の説明力がそのまま浮き彫りになります。
レッスンのステップ
1 専門分野についての記事を読む
2 語彙、表現確認 質問回答
3 こちらからその記事の内容について尋ねる
4 生徒にわかりやすく説明してもらう
こちらが理解できれば、その説明は成功です。
理解できなければ、
- どこで詰まったのか
- 何を言いたかったのか
を一緒に整理し、より伝わる日本語に調整していきます。
実例:Gさん 研究者・専門職の生徒
- 要望
-
学会や仕事で日本語を使いたい
専門内容を分かりやすく説明したい
- レッスン内容
-
- 専門分野の記事読解
- 専門用語の日本語確認
- 想定外の質問への対応練習
期待できる効果
- 日本語で専門内容を説明できる
- 日本人相手でも会話が成立する
- 説明力そのものが鍛えられる
- 教材
-
専門分野の関連Webページ等


まとめ
日本語上級者レッスンは、「どこをポイントとするか」で質が大きく変わります。
上級者になると、語彙や文法そのものはある程度自分で補えます。
そのためレッスンでは、
- 何を目的に話しているのか
- どうしたらより生徒の望む表現を引き出せるか
- 今回の会話は再現性があるか
こうした全体の設計が見えているかどうかが重要になります。
今回ご紹介したように、上級者レッスンは決して特別なことをしているわけではありません。
論理的に話す練習
プレゼンやロールプレイ
専門分野の説明文章・メールの添削
フリートークでの深掘り
どれも「会話」を軸にしながら、目的に合わせて組み立て直しているだけです。
上級者レッスンがうまくいかないと感じるとき
多くの場合、
- 話題選びに迷う
- 毎回その場しのぎになっている
- 生徒の成長が見えにくい
といった悩みが出てきます。
実はこれは能力不足というより、生徒のためのレッスン設計の視点が教師である自分の中まだ整理できていないだけのことがほとんどです。
フリートークとビジネス日本語は「別物」ではない
上級者レッスンの多くは、最終的にフリートークに行き着きます。
また、ビジネス日本語レッスンであっても、必ず「会話で考えを整理し、伝える時間」が含まれます。
つまり、フリートークは上級者レッスンの土台であり、ビジネス日本語はその応用とも言えます。
ここをレッスンとしてどう設計するかで、継続率や満足度は大きく変わります。
もし、
- フリートークが雑談になりがち
- 上級者相手に毎回迷ってしまう
- ビジネス日本語を体系的に整理したい
と感じているなら、一度、
レッスンの進め方・見ているポイントを整理するという視点を持ってみてください。
やり方を増やす前に、枠組みを整えるだけで今のレッスンはずっと楽に、そして生徒のためになるのになり、結果リピートされるようになります。
フリートークやビジネス日本語をレッスンとして成立させる考え方、進め方の詳細、パターン、ケーススタディを別の教材でまとめています。
興味がありましたらぜひ参考にしてください。














