フリートークで大切なことを以前の記事でお話ししてきましたが、今回は生徒に「どんな質問をするとレッスンが充実したものになるか」についてお話ししたいと思います。
生徒からこんなクレームがありました。
みなさん、問題点はなんだと思いますか?
フリートークレッスンを受けているんだけど、まだ日本語の勉強を初めて半年だから、正直先生の言っていることがわからなくて困ってる。
「世界はこれからどうなると思いますか」とか、抽象的な質問、日本語で答えるなんて、私にはちょっと難しすぎる!!
答えられないことが多すぎて、自信をなくしちゃう。
フリートークレッスンの会話が簡単すぎて成長を感じないんだよね。
僕がフリートークレッスンを受講している理由は「日本語で自分の考えをうまく表現したい」からなのに。
「猫と犬、どちらが好きですか?」とか聞かれても…
先生は僕のレベルと要望を理解しているのか疑問だな
生徒は日本語教師の質問の仕方に不満があるようですね。生徒にどんな質問をしたら良いのでしょうか?一緒に考えていきましょう。
質問力はフリートークに欠かせない!
「生徒にどんな質問をするか」は非常に重要です。特にフリートークでは会話を自然に進めながら、日本語の練習をしなくてはなりません。
相手はもちろん日本語母国者ではありませんので、日本語教師は「どんな質問をするとどんな文型の練習ができるか」、など予測しながら会話を進めていく力が必要とされます。
またレベルに応じて、具体的でより答えやすい質問、また少し質問の範囲を広げ、自分の意見を表現する質問を即座に考えるスキルが求められます。
生徒の関心のある質問を
どのレベルでも、生徒の関心のあることについて質問しましょう。
例えば、スポーツに全く関心のない生徒に「日本人スポーツ選手が海外で活躍することについてどう思いますか」と聞いても、日本語レベルの問題以前に、知らないことなので答えにくいですよね。
オープンクエスチョンとクローズドクエスチョン
「オープンクエスチョン」「クローズドクエスチョン」という質問方法があるのをご存知かと思います。
オープンクエスチョン
回答の範囲を制限しない質問。「はい」「いいえ」などの選択肢がなく、回答者が自由に考えて答える質問。「休暇にはどこへ行きたいか」「なぜそう思うか」といった質問など。⇔クローズドクエスチョン。
引用元:コトバンク
クローズドクエスチョン
回答を限定する質問。選択肢を用意して、その中から選ばせる質問。「はい」か「いいえ」を選ぶものや、「犬と猫ではどちらが好きか」といった質問など。⇔オープンクエスチョン。
引用元:コトバンク
この質問方法はもちろんフリートークレッスンでもとても役に立つんですよ。
ですが、注意点があります。
レベルによって、クローズドクエスチョンの方がいいか、オープンクエスチョンがいいか変わってきます。
中級への質問
中級の学習者にとってフリートークレッスンの目的はまだ「日本語を話す」ことだと考えられます。また、未来を想像する話より、過去の出来事の方が具体的なのでより回答しやすいです。
中級前期
初級を終えたばかりの生徒は文法まだ自分から発話することに慣れていなくて、初級レベルの文法も会話では出てこないことが多くあります。まず、習った文法、語彙を実際の会話で使えるようにすることが重要です。
中級でも初級に近い場合はクローズドクエスチョンで簡単に答えられる質問をした方が生徒のレベルにあった練習が多くできます。
初中級の生徒には限定された質問から初めて自信をつけてきたらセミオープンクエスチョンに移行していきましょう。
では、具体的な会話例をご紹介していきますね。
中級前期者会話 OK例 クローズドクエスチョン
オリンピック開催は賛成ですか、反対ですか?
うーん、反対です。
どうしてですか?
*危ないと、怖いだから。やめるいいと思います。(誤用)
危なくて、怖いからですね。そうですね。やめたほうが良いかもしれませんね。
(誤用を自然に訂正し、スクリーンシェアしているノートに書いてみせる。)
はい。危なくて、怖いです。やめたほうが良いです。(あ、一つ勉強になったな。文法は理解しているけれど話すときは間違えてしまうな。。。次回気をつけよう)
中級前期者会話 NG例 オープンクエスチョン
では、もしオープンクエスチョンならどうなるでしょうか。想像してみましょう。
現在の世界の傾向についてどう思いますか?
あー、うーーーん、世界..わるい…うーーーーーーーーん
(どうなる?何??なんのこと?経済のこと?環境?そもそも経済とか環境の単語にほんごでしらないし!!)
先生はどうしてそんなこと聞くの?私のレベル、ちゃんと把握しておいてほしい!わからないことだらけ!!
これじゃ自信がなくなっちゃう。
中級前期者にこのような質問は難しすぎますよね。
世界状況を表現する語彙も足りなければ、文法も基本的なものしか学んでいませんからこのような抽象的な質問に答えるのは難しいです。
中級後期
中上級はクローズドクエスチョンでは簡単すぎますが、抽象的な質問は難しいです。
答えをある程度限定するような質問がちょうど良いです(セミオープンクエスチョン)。
質問例:「どうして日本語の勉強を始めたんですか?」
中級前期:クローズドクエスチョン 明確な質問に答えることで日本語になれ、自信をつけていく
中級後期:クローズドクエスチョンとオープンクエスチョンの中間、「セミオープンクエスチョン」
中級の生徒には答えの範囲を狭めた方がが答えやすく、会話が円滑に進みます。またこの質問からは「〜方がいい」「〜ように思う」などの簡単な文型を練習することができることが予想できるので、日本語教師側も教えやすいです。
上級 オープンクエスチョン
上級学習者のフリートークの目的はいかに「自分の意見をわかりやすく伝えるか」です。
上級者は深い内容、質問で考察を深めるレッスンを好む傾向があります。生徒の興味、仕事の内容に合わせてより考察が深まる会話に導きましょう。
文法、語彙にはもちろん、より自然な言い回しなどを練習します。
例
Aさんって、エンジニアをされてるって聞きましたけど、実は私「〜エンジニア」ってたくさんありすぎてどんなことをするかわからないんです。よかったら教えてくれませんか?
(どんなこと!?えーーーちょっと難しい!頭フル回転、どう説明したらわかりやすいかな??じゃとりあえず有名なエンジニアの説明から…)
そうですね、ええっとまずシステムエンジニアというのは〜〜〜で、▲▲▲▲などをする仕事です。私がやっているのはネットワークエンジニアで〜〜〜〜
このように仕事に関連させて、実際にされる可能性のある質問をするとより実力がつきます。
オープンクエスチョンとはいえ、あまりにも漠然とした抽象的な質問は生徒が回答に困ってしまいますので、注意しましょう。
質問の方法について学ぼう
フリートークのレッスンに質問の能力が必要だと気が付いてから、何冊か質問に関する本を読んで勉強しました。役に立った本をご紹介しますね。
「質問力」は日本語レッスンの場面だけでなく、今後人と話すときのコミュニケーションスキルとしても必要な能力だということを実感した2冊です。
(「いい質問」が人を動かす はKindle Unlimited
まとめ
今日の内容を簡単にまとめると以下になります。
どんなレベルでも、相手の興味のある、答えやすい質問を!
生徒のレベル、要望を察知し、質問を考える察知能力が必要!
中級:クローズドクエスチョン セミオープンクエスチョン
上級:オープンクエスチョン
ではまたお会いしましょう!!