オンラインレッスンに必要な教科書は、思っているほど多くありません。
あれこれ買い揃えるより、どのレベルの生徒を想定するか、どんなレッスンを提供するかを決めて、少数を使い込むほうが、結局は効率がいいと私は考えています。
講師側も、同じ教材を繰り返し使うことで理解が深まり、説明の安定感も自然と上がっていきます。
私はこれまで、オンラインレッスンを1万回以上重ねてきましたが、実際に使う教科書はほぼ決まっています。
今回は、長年のレッスンのなかで自然と手元に残った5冊を中心に紹介します。

- オンライン日本語教師歴10年以上、レッスン10,000回以上
- 上級中心(ビジネス・大学院入試・JLPT N1対策)
- 体験レッスン後の3か月継続率 90%以上
- 2年以上継続中の生徒 7割以上(最長8年)
- 2019年〜オンライン日本語教師向けの発信
売り込まなくても続けてもらえるレッスン。そのコンセプトと具体的な例を教材と講座にしています。
再現性のある考え方を学ぶ教材・講座
1 みんなの日本語(初級・アジア圏の生徒に)
日本語教師なら、一度は使ったか、名前を聞いたことがある教科書だと思います。
それくらい定番で、長く使われ続けている初級教材です。
特にアジア圏の生徒には使用率が高く、すでに学習経験があることも少なくありません。
正直会話の内容や表現に古さを感じる部分はあります。
ただ、文法を段階的に積み上げていく構成は、今でも十分に優秀です。
私自身、初級レッスンでは長年この一冊に助けられてきました。
本冊だけでなく、練習問題集や教師用の指導書、補助教材も揃っています。
ネット上にも教え方や文法解説、教案がよく共有されていますので初級を教えるのが初めての先生でも扱いやすいはずです。
教え方の手引きもあるので、最初の一冊として安心して選べます。
総合的に学びたい場合は、文法・読解・聴解・会話まで扱える「みんなの日本語 中級」も合わせておすすめです。
中級もおすすめ!(実践的な問題が多い)
2 げんき(初級・欧米の生徒に)
文法の説明が英語でされているため、欧米圏や英語を母語とする学習者に向いています。italki や preply などで教えているなら、英語圏の初級者に対応するために一冊持っておくと安心です。
イラストや構成は「みんなの日本語」より実践的で、学習者が抵抗なく取り組みやすい印象があります。
練習問題もテンポよく進められるものが多く、楽しみながら学べるところを好む生徒も少なくありません。
一方で、説明がすべて英語なので、英語での指導に不安がある先生にはやや使いにくいかもしれません。
また、注意点として「みんなの日本語」とは動詞の分類や説明の仕方も違うため、併用するなら、教師の側で一度整理しておく必要があります。
私は、英語ができる初心者の生徒には、初級レッスンでこの教科書を使うことが多いです。
3【JLPT】「TRY!」シリーズ(N4〜N1)

JLPT対策のレッスンでは、主にこの「TRY!」シリーズを使っています。
正直に言うと、この一冊だけで合格を狙うのは難しいです。
練習問題集や過去問は、別途必ず必要になります。
ですが、試験に必要な文法を一通り整理するという点では、とても使いやすいです。
まず全体像を掴む第一歩として、長く頼りにしています。
N5からN1まで揃っていますが、N5は受験する生徒自体が少ないので、必須ではありません。
N4・N3は、「JLPTは受けないけれど、会話でよく使う文法を体系的に整理したい」という生徒にも使えます。
英語・中国語・ベトナム語版があり、文法を学んでからチェック問題に進む流れにメリハリがあるので、生徒も飽きにくいです。
私自身、ほぼ毎日のように使っていて、紙の教科書はテープで補強するほど使い込みました。体感では N4・N3・N2 を受験する生徒が多いので、全部を揃えるのが負担なら、まずこの3冊から用意するのがいいと思います。
JLPTレッスンのおすすめの教科書と進め方については詳しくこちらに書いてあります。

4 日本語総まとめシリーズ(JLPT)
先ほどの「TRY!」と併用しています。
「日本語総まとめ」は、文法・読解・聴解・語彙が分野ごとに分かれているのが特徴です。
生徒の苦手をピンポイントで強化したいときに、とても便利です。
読解だけが極端に弱い、聴解で点が伸びない、文法は分かるのに運用が不安定。そういうときに、必要な冊子だけを使って調整できます。
使い方は宿題用に渡してもいいですし、「TRY!」が一通り終わったあとの補強に使うこともできます。試験直前期に分野別で詰めるのにも向いています。
「TRY!」で全体を整理し、「日本語総まとめ」で分野別に補う組み合わせにすると、レッスンの進め方に余裕が出ます。
英語・中国語・ベトナム語・韓国語に対応していて、電子書籍もあります。ただ、問題数はやや少なめで、解説もシンプルなので、補足の説明は前提と考えておいてください。

5 ロールプレイで学ぶビジネス日本語
ビジネス日本語のレッスンで、ほぼ毎日使っている一冊です。
よく使うビジネス日本語の表現を、ロールプレイを通して身につけられます。
日本の企業文化を紹介し、それについて考える課題もあるので、日本で働きたい生徒や、すでに日本で働いている生徒にぴったりです。
電話対応、クレーム対応、会議、自己紹介。
実際のビジネスシーンを想定したロールプレイが多く収録されています。
最初はほとんどの生徒がうまくできませんが、少しずつ言えるようになると、達成感をはっきり感じてくれます。
生徒の表情が変わって、レッスン全体が生き生きしてくるのも、この教科書のいいところです。
トライアルレッスンでこの教科書を使うと、ビジネス日本語希望の生徒は、ほとんどがそのまま複数回のレッスンに進みます。
私自身、毎日のように使っていて、すっかり使い込んだ状態です。
それだけ現場で頼りにしている一冊だ、ということだと思います。
ただし、上級レベルが対象なので学習者は限られますし、海外では手に入れにくい点は知っておいてください。(多くの生徒は日系書店で手に入れたり、アマゾンなどで購入し現地に送ってもらっているようです)

上級者向け:新完全マスターシリーズ(N2・N1)
N2・N1レベルのレッスンでは、新完全マスターをよく使います。
基本的には、N2・N1の「TRY!」を一通り終えたあとに取り入れています。
「TRY!」で文法全体を整理し、新完全マスターで細かい違いや精度を詰めていく位置づけです。
文法・読解・聴解・語彙と分野別に分かれているのですが、その分、すべてを授業内で扱うのは時間的に現実的ではありません。
使い方には工夫が要ります。できる分野や理解の進んでいるところは宿題に回す、苦手な分野だけをレッスンで重点的に扱う、読解は時間がかかるので基本は宿題にして分からなかったところだけ解説すなど、レッスンと自習をうまく分けることが大切です。
特に N1 になると、文法を覚えるだけでは合格できません。
似ている文法のニュアンスの違いや、使われる場面の差まで理解する必要があります。
新完全マスターの文法は、似た文法をひとまとめにして比較できる構成なので、上級者の「あと一歩」を埋める教材として優秀です。
解説はシンプルなので教師が補足しながら進めることになりますが、その分、自分の説明力も鍛えられます。
N2・N1合格を本気で目指す生徒には、欠かせないシリーズです。

まずはこの3冊から
ここまで紹介してきた中で、これから始める方、始めたばかりの方にまずおすすめしたいのは、次の3つです。
みんなの日本語、げんき、そして TRY!(N4・N3)。
新人のうちは、初級レベルの生徒を担当することが多いです。
この3シリーズがあれば、初級文法の説明、簡単な会話練習、JLPT対策の導入まで、ひと通り対応できます。
最初からたくさん揃える必要はありません。
まずはよく使うものを手元に置いて、レッスンをしながら少しずつ増やしていく。
それで十分です。
結局学ぶ文法は教科書が違っても同じです。自分がどう生徒に教えるかが大切です。


