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氷河期世代とオンライン日本語教師

最近片付けをしていたら10年以上前の手帳が出てきました。
そこに、「将来、月に30万円くらいの収入があったらいいな」という数字が書いてありました。
当時の私は、日本語教師の試験に合格したばかり。その収入は手が届きませんでしたし、どう到達するかもよくわかりませんでした。

ふと考えました。
なぜ当時の私は「30万が無理」と思い込んでいたんだろう、と。
私の性格の問題だと思っていましたが、同じ世代の人と話すうちにそれだけではなさそうだと気づきました。

私は、就職氷河期世代です。

この世代には、「自分には無理だ」と思いやすいところがあるのではないかと推測しています。
背景を考えると当然の流れだと思います。

目次

氷河期世代の諦め癖

新卒のとき、正社員の枠そのものが少なく、会社によっては募集すらありませんでした。
あっても数人。まわりの優秀な同級生でも、正規雇用にたどり着けないことがめずらしくありませんでした。
選べる立場ではなかったので、派遣や契約から始めることになります。
そこで数年働いて力がついてきても、契約が切れます。
また次を探して、契約が切れる。
そのくり返しで今40代。

特に女性は、途切れやすさがもう一段重なります。
結婚や出産で、キャリアがいったん切れてしまいます。
大企業で産休や育休を正々堂々と取れる人は、まだよかったと思いますが、そもそもこの時代は、そのチャンスすら与えられなかった人が多いです。
非正規のままでは、産休も育休も実際に取ることは難しい状況だったのではないでしょうか。

時代背景で頑張っても叶わなかったことがいくつもありました。
だから、「どうせ無理」と期待する前に諦める癖がついてしまっても不思議ではありません。

氷河期世代の日本語教師

氷河期世代で、日本語を教えている人も少なくありません。
非正規での働き方を選ぶ人も多いです。
あくまで傾向ですが、厳しい状況に、良くも悪くも慣れています。

慣習として授業の準備は時間外が当たり前、報酬も低いまま。
おかしいと感じてはいても、その場所からは抜け出しにくい。
そして年齢も考えると、ここで辞めても他に雇ってくれるところがないのでは、とそのままにしてしまう。
それはそれで納得していればいいと思います。
しかし問題なのは、この働き方は嫌だ、と思いながら働き続けることです。
当然ストレスが溜まります。

変えたいなら、動くしかない

そこでどうしたらいいのか。
何か行動を起こさなければ何も変えられません。
まず簡単にできることは、自分の棚卸しだと私は考えます。

まずそもそも自分は何がしたいのか。
どんな状態だったら快適なのかを考えることから始めます。
例えば私の例でお話しすると、日本語学校で教えるのは考えませんでした。
一対一で話を深めるのは得意ですが、集団に教えるのが苦手だからです。

そこで相手を決めて、レッスンの流れを組み立てて、自分で動かしました。
やった分だけ、失敗でも、成功でも何かしら手応えが返ってきます。

オンライン日本語教師の世界で問われるのは、正社員だったのか、派遣社員だったのかは関係ありません。
目の前の生徒にどれだけの価値を届けられるか。それだけです。
努力がちゃんと返ってくる場所は、不毛な状況下にあったこの世代にとって貴重なのではないでしょうか。

40代以降の日本語教師の強み

そして最近、もうひとつ感じていることがあります。
この世代は、教える側として強い、ということです。

たとえば、40代以降の学習者を想像してみましょう。
営業で仕事で日本語を使う人や、人生の後半で学び直す人にとっては、20代の若い講師とでは、テンションや話が噛み合わないことがあります。
私たち氷河期世代は回り道をしました。しかし経験値の厚みが、そのまま説明の深さになります。
この差が、レッスンの質に直結します。

上級者になるほど、求めるものは変わっていきます。
ただ楽しく話したいのではなく、深い話をしたい、日本語を、知的な学びとして味わいたいという段階の生徒です。
最近読んだ本のことや仕事で下す判断のこと。
自分の国と日本とで、社会がどう違うか。
このような深掘りした話題を、浅く流さずに受け止められるかどうかで、講師自身がどれだけの世界を見てきたかが出ます。
人生の後半に差しかかったこの世代には、そのぶん社会を観察したり、思考を深める時間も多いはずです。
会話が、ただの練習ではなく対話になり、知的な学びの場になる。
それが、上級者が本当に求めている場です。

文法知識は学べばいい

もちろん、経験があれば誰でも簡単にうまくいく、という話ではありません。
その厚みを、相手に届く形に変える努力は要ります。

たとえば、上級を教えようとすると、文法をどう説明するかで止まる人がとても多いです。
人生の実感は十分あるのに、そこだけが不安で、上級に踏み込めない。
ただ、それは埋められる不安です。文法の教え方は、後から身につけられます。

できることを小さく積み上げ続ける

だからこの仕事は、この世代にとって長く続けられるライフワークになりうると思っています。
年を重ねるほど不利になる仕事ではなく、重ねた分だけ深くなる仕事だからです。

嘆いたり、できないとあきらめるのではなく、自分の場所を自分で積み上続けてきた人ほど、強く生き残れる場所だと思っています。

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